ホラー映画レビュー / THE MIST
■THE MIST
どうも最東です。
いきなり言い訳じみた話をしてしまいますが、最近とても多忙でして……。
そんな中で大好きなホラー映画をあまり観られないのが悩みの種です。
ですが、そんな私もようやく一作気になっていたタイトルを鑑賞することが叶いました。
その映画のタイトルは『THEMIST(ザ・ミスト)』直訳するとそのままで『霧』という意味となります。
原作はスティーブン・キング。ご存知の方も多いと思いますがホラー小説……いえ、最早ホラー界の大御所だと言っていいでしょう。
ホラー好きの中でこの名を知らない人はいないのではないのでしょうか。
■スティーブン・キング
スティーブン・キングといえば、『キャリー』『シャイニング』『クジョー』『スタンドバイミー』『ペットセメタリー』『ショーシャンクの空に』『痩せゆく男』『ゴールデンボーイ』『グリーンマイル』『ドリームキャッチャー』など錚々たるタイトルが有名ですね。
キング氏は、ホラーのみならず感動作も執筆することでも有名で、往年の名作『スタンドバイミー』や『グリーンマイル』なども代表作に列挙しています。
ですが今回のテーマである『ミスト』を撮った監督はフランク・ダラボンと言い、キング作品は『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』を撮影しています。
つまり、キング作品に縁深くはあるもののキングの真骨頂であるホラー作品は『ミスト』が初めてなのです。
さて、それだけを聞けば純粋に『ホラー作品としての出来はどうなのか?』とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
ところがどっこいこれはちょっとすごいですよ。
■なぜに今作が有名なのか
とある検索をすると必ずこの映画はひっかかります。
例えば『後味が悪いラスト』やら、『トラウマになるラスト』、もしくは『鬱になる映画』などなど……。
映画談議になった時に、ホラーに限らず強烈な余韻を残すエンディングを持つ映画としてこの映画は不動のものとなったのでした。
古今東西、ホラー映画は数えきれないほどに種類やタイトルがありますが、この『ミスト』に於いて斬新なポイントというのは実はあまりありません。
軽くあらすじを紹介すると、とある街に強烈なストームが訪れ気が倒れ家や車に被害がありました。
翌日、修理のための道具やらなんやらを買いにマーケットへと赴くと濃い霧が突然立ち込め、そこから命からがら逃げてきた老人が言いました。
「あの霧にはなにかがある扉を全て閉めろ!」
と。
そして外の様子を見ようとしたアルバイトの若者が霧の中から現れた触手に連れ去られ、外を見に行った男は体を真っ二つにして殺され、いよいよ店内はパニックとなりました。
そんな中宗教に熱心な信者が「神が怒っている」とか言い出し、次々と客たちを扇動し始め、二極化が進み主人公たちは店から出て霧の無い場所まで行こうと試みますが……。
と、こういう内容の映画です。
どうでしょうか。内容自体は対して目新しさはないのではないでしょうか。
それもそのはず。
この『ミスト』の原作は1980年のキング氏が発表した中編が原作です。
映画が公開されたのは2007年。
原作から実に27年が経過したあとでの公開だったのです。
ですので、原作の古いこの映画はホラー映画としてはむしろよくあるタイプの内容だったと言っていいでしょう。
それなのに、この映画がなぜラストの後味の悪さで有名になったのか?
■唯一、原作とは違う
私は原作の『霧』を読んだ訳ではないので、詳しくは比べられないのですが、ともかくとして今作を撮るにあたり、監督フランク・ダラボンは原作のとある部分を脚色しました。
脚色……というよりは改変と言っていいでしょう。
そして、彼はキング氏にそれを見てもらうとキング氏は次のように言いました。
「この結末は恐ろしい。私には思いつかなった」と言わしめたのです。
この結末に関しては、実際に映画を見てもらうとして……ホラーとしては抜群のエンディングだったのでは、と思います。
否定的な意見も見かけますが、私も手放しでは賞賛できません。
ですが、現状のホラー映画でラストで心がざわつく映画は珍しいと言っていいでしょう。
何故ならありとあらゆるラストやエンディングがこれまでに提示され過ぎていて、今更どんなものを差し出されても驚かないと思い込んでいたのです。
ですので、このエンディングは映画の面白さというものをまた思い出させてくれるものだと言ってもいいのではないでしょうか。
■本当に恐ろしいもの
さて、この映画で恐ろしいものとして描かれていたのは、なにも霧の中のモンスターだけではありません。
この映画の恐ろしさの本質は、なんといっても『特殊な状況下に置かれた人間の心理』ではないでしょうか。
劇中登場する人物に、宗教に熱心な女性がいます。
この女性はことが起こった当初、なにかにつけて「神の罰である」やら親切にしてくれた女性をゴミ扱いしたり、人格破綻者としか思えない言動を繰り返し、他の登場人物からも劇的に嫌われます。
ですが状況が悪化するにつれ、彼女の進言は極限状況に置かれた人々の心を動かし、やがて彼女を嫌っていた人々は彼女を神の使者として崇めるようになり、彼女の邪魔になるような人間を殺してしまうほどにまで信仰してしまうのです。
この人間の集団的異常心理というものが、この映画のラストよりも私にはねっとりと纏わりつくように残っています。
ラストばかりが有名なこの映画ですが、やはりラストに至るまでの過程をどうか見てほしいと思います……。
★★★☆☆
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